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太田 雅和; 田中 拓*
Journal of Environmental Radioactivity, 201, p.5 - 18, 2019/05
被引用回数:4 パーセンタイル:16.44(Environmental Sciences)放射性廃棄物地下処分施設から漏洩するCHは、土壌中で微生物による酸化を受けてCOとなる。既存のC移行モデルでは、土壌中COの植生への移行が主に葉面吸収によって起こることが仮定されている。一方、COの経根吸収の影響は把握されていない。本研究は、COの経根吸収が植生へのC移行に及ぼす影響を評価するため、土壌中のCHの輸送と酸化をモデル化し、これを陸面CO移行モデル(SOLVEG-II)に組み込んだ。モデルによる土壌中CH移行の計算性能は、深部土壌へのCH注入の野外実験データを用いて検証した。次に、モデルを地下水面(深度1m)からのCHの連続放出時の陸面C移行に適用した。土壌中で根が浅く分布(深度11cm)する状況では、植生へのC移行ではCOの葉面吸収の影響が支配的となり、葉へのC蓄積の80%に寄与した。一方、根が地下水面近くまで分布(深度97cm)する状況では、葉へのC蓄積の半分以上(63%)が経根吸収によってもたらされた。更に、メタン酸化が土壌深部(深度20cmあるいは80cmまで分布)で起きた場合には、葉に蓄積したCの全量が経根吸収によってもたらされた。これらの結果から、根が地下水面近くまで分布し、CHの酸化が土壌深部で起きる場合は、COの経根吸収が植生へのC移行において支配的となることが明らかとなった。
岡田 翔太; 出雲 沙理; 仲田 久和; 辻 智之; 坂井 章浩; 天澤 弘也
JAEA-Technology 2016-023, 129 Pages, 2016/11
第二種廃棄物埋設規則に規定された廃棄体の技術基準の一つには、「埋設された場合において受けるおそれのある荷重に耐える強度を有すること。」とされ、国によって確認を受けなければならない。そのため、日本原子力研究開発機構では、これまでに各拠点における技術基準に適合する廃棄体の作製に備えて、廃棄体作製に係る基本手順を検討してきており、一部の拠点においてはその検討結果を採り入れて不燃性の固体状の放射性廃棄物を分別し、これに係る作業記録を作成して保管・管理している。本報告では、その際の分別作業記録に基づき廃棄物の組成を設定し、基本手順に従い容器へ収納、モルタル充填材の充填、固型化、養生を行って模擬廃棄体を作製して、コンクリートピット埋設設備に俵積み方式で埋設処分した場合を想定した実載荷試験と、トレンチ埋設設備に埋設処分した場合を想定した実載荷試験を行い、それぞれの模擬廃棄体の変位量及びひずみ量等を測定し模擬廃棄体の耐埋設荷重を設定した。
本間 信之*; 棚井 憲治; 長谷川 宏*
JNC TN8420 2001-007, 86 Pages, 2002/02
本稿では、今後の幌延深地層研究センターにおける地下研究施設計画に反映することを目的として、海外の地層処分プロジェクトを対象に、その計画や実施中の試験などについて調査を行った。調査対象には、幌延計画への反映を考慮し、堆積岩系や沿岸部の地質環境における次のプロジェクトを選んだ。・スイス Mt.Terri Project(オパリナス粘土(頁岩))・フランス Bure URL(粘土質岩)・ベルギー Mol(ブーム粘土)・スウェーデン Aspo Hard Rock Laboratory(HRL)(花崗岩:沿岸部)・英国 Sellafield Rock Characterization Facility(RCF)(火山岩:沿岸部) 調査では特に人工バリア性能、施設設計施工、支保工、搬送定置、閉鎖などに関わる情報を幅広く収集した。これらの情報に基づき、個別の調査試験の目的、内容、成果について整理するとともに、調査試験の目的、反映先、相互の関連、実施順序などから、地下研究施設全体での戦略やねらい、流れなどを整理した。
伊藤 彰; 川上 進; 油井 三和
JNC TN8400 2001-028, 38 Pages, 2002/01
高レベル放射性廃棄物地層処分における処分場閉鎖後のニアフィールドの挙動は、廃棄体からの放熱、地下処分施設の再冠水、緩衝材の膨潤および変質など、熱的、水理学的、力学的、化学的なプロセスの複合現象として取り扱う必要がある。本研究は、地層処分システムにおいて想定される熱-水-応力-化学(THMC)連成挙動の予測を行うための現象理解に基づく数値解析システムを構築し、様々な地質環境条件に対するニアフィールドの熱、水、応力、化学場の長期的変遷を数値実験により予測することを目的とするものである。THMC連成解析コードの開発にあたっては、1.開発期間が複数年となること、2.既存ツールを用いた連成解析コードを構築し、数値解析の実現可能性を確かめる必要があることから、開発ステップを3段階に設定し、平成13年度に開発をスタートしている。本報告は、このTHMC連成解析コード開発計画のうち、1)開発ステップ1のTHMC連成解析コード開発、2)ベントナイト中の物質移行経路、3)THMC連成解析コードの並列化に関する検討結果を取りまとめたものである。
三浦 昭彦; 根本 慎一*
JNC TN8200 2001-005, 54 Pages, 2001/08
東海事業所で実施したアスファルト固化処理施設火災爆発事故の原因究明活動で得られた知見及び高レベル放射性物質研究施設(CPF)用小型遠心抽出機開発について、フランス・ニースで開催された「第9回原子力技術に関する国際会議(ICONE-9)」で報告を行い、海外の原子力関係機関等へ周知するとともに、再処理技術及びリサイクルに関する最新の技術情報等の調査を行った。
福本 雅弘; 西川 義朗*
JNC TN8400 2001-017, 355 Pages, 2001/03
TRU廃棄物処分研究における廃棄体中に含有される有機物の処分場の性能への影響評価の一環として、以下の7有機物について有機物の変質機構の中で重要と考えられるアルカリ加水分解の試験を行った。90C、91dまでのアルカリ加水分解試験の結果、各有機物が低分子量化し、有機物由来の分解物や変成物と推定される成分を溶液中に検出することができた。処分という長期間を考えた場合、各有機物は、今回確認したような分解生成物になると考えられる。確認した分解生成物を以下の各有機物の後に付記した。そのため、これら分解生成物についての放射性核種移行に与える影響評価が今後重要となる。(1)ナフタレンスルホン酸とリグニンスホン酸の混合系セメント用減水剤(ナフタレンジスルホン酸など)、(2)ポリカルボン酸系セメント用減水剤(末端メトキシポリエチレングリコールのオリゴマー)、(3)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩(EDTA)(EDTAから酢酸が脱離・環化した変成物)、(4)りん酸トリブチル(TBP)(DBP、n-ブタノール)、(5)ポリ酢酸ビニル(酢酸)、(6)ナイロン66(アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン)、(7)硬化したエポキシ樹脂(グリセロールポリグリシジルエーテル、カルボン酸)
牧野 仁史; 加藤 藤孝; 宮原 要
JNC TN8400 2000-033, 74 Pages, 2000/11
天然現象は地質環境の長期安定性に擾乱を与える可能性のある要因の一つであり、その発生の時期、頻度及び影響の形態などに関する不確実性を考慮することが必要であるため、将来において地層処分システムが天然現象の影響を被るものとあえて想定することにより、天然現象が地層処分システムの性能に与える影響を評価し、サイト選定に際して留意すべき天然現象とその影響について把握しておくことは重要である。このため、本検討では、地質環境の長期安定性に影響を与える可能性のある天然現象として、各国の例やわが国の特徴を踏まえた検討の結果抽出された、(1)隆起・沈降・侵食、(2)気候・海水準変動、(3)地震・断層活動、(4)火山・火成活動、の各天然現象について、それらの発生をあえて想定するとともに、それらが地層処分システムの性能に与える特徴的な影響に焦点をあてた検討を行った。その結果、変動シナリオに関しては、断層活動により地下水流れ及び核種移行の卓越的な経路となる断層が廃棄体を横切ることを想定した場合において、断層活動発生時期や断層内地下水流量の値によっては、最大線量が諸外国で提案されている安全基準やわが国の自然放射線レベルと同レベルとなる可能性のあることが示されたが、その他の天然現象については、最大線量が諸外国で提案されている安全基準を下回る結果が得られた。また、接近シナリオに関しては、地層処分起源の核種量ないしは核種フラックスが天然のものと比較可能なレベルである可能性が示唆された。これらの結果は、サイト選定に際して留意すべき天然現象とその影響についての情報として用いることができると考えられる。しかしながら、比較的簡単なモデル化を行うとともに、保守的な想定(条件)を組合せた評価の結果であるため、天然現象の影響が絶対値として大きいかどうかを直接的に判断するための情報として用いることには注意が必要である。
研究開発評価委*
JNC TN1440 2000-009, 150 Pages, 2000/11
核燃料サイクル開発機構(以下、サイクル機構)は、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月7日 内閣総理大臣決定)及びサイクル機構の「研究開発外部評価規程」(平成10年10月1日制定)等に基づき、「高レベル放射性廃棄物地層処分研究の全体計画案」に関する中間評価を研究開発課題評価委員会(廃棄物処理処分課題評価委員会)に諮問した。これを受けて、廃棄物処理処分課題評価委員会は、本委員会によって定めた評価方法に従い、サイクル機構から提出された課題説明資料、補足説明資料及び委員会における議論に基づき、本課題の評価を行った。本報告書は、その評価結果をサイクル機構の関係資料とともに取りまとめたものである。
加藤木 賢; 助川 泰弘*; 鈴木 敏*; 吉田 充宏; 野原 尚史; 松野 洋一*; 三代 広昭
JNC TN8440 2000-022, 180 Pages, 2000/10
廃棄物屋外貯蔵ピットについては、平成9年8月26日に保管されている廃棄物の容器が腐食、浸水していることが確認された。その後、改善措置に取り組み、廃棄物の取り出し作業を平成10年4月10日に終了し、平成10年12月21日の漏水調査等報告をもって改善措置を終了した。その後、廃棄物屋外貯蔵ピット内を一般のコンクリート中の放射能程度まではつり除染し、管理区域を解除したのち、コンクリートを打設してピットを閉鎖した。本データ集は、廃棄物屋外貯蔵ピットの閉鎖措置報告書の別冊PartIIとして、ピットの閉鎖措置に係る作業において実施した汚染検査等についてまとめたものである。なお、廃棄物屋外貯蔵ピットの閉鎖措置報告書の別冊PartIとして、廃棄物屋外貯蔵ピットの改善措置等に係る写真集がある。
加藤木 賢; 石橋 祐三; 吉田 充宏; 三代 広昭; 助川 泰弘*; 井坂 正明*; 鈴木 敏*
JNC TN8440 2000-020, 500 Pages, 2000/10
廃棄物屋外貯蔵ピットについては、平成9年8月26日に保管されている廃棄物の容器が腐食、浸水していることが確認された。このため、直ちにピット周辺の汚染の有無を確認するための調査、ピット内への増水を防止するためのシート布設、ピット内滞留水の汲み上げ、ピット内廃棄物の取り出しを行うための作業建家及び廃棄物処理設備等の設計並びに許認可を開始した。作業建家の建設後、廃棄物取り出し作業を行い、平成10年4月10日に取り出しを終了し、その後、滞留水の流入調査及びピットからの漏水調査を行い、国、県、村等への報告(平成10年12月21日)を以て改善措置を終了した。その後、ピットの閉鎖措置として、ピット内壁を一般のコンクリート中に含まれる放射能のバックグランド程度まではつり除染を行った後、管理区域を解除し、コンクリートを打設して閉鎖する工事を行った。ピットの閉鎖措置は、平成11年8月中旬より作業準備を行い、その後、廃棄物保管エリア確保のためのグリーンハウス縮小及び資器材の解体撤去を開始するとともに、9月上旬よりピット内壁のはつり除染作業を開始し、ピット内はつり除染及び内装設備の解体撤去を平成12年6月30日までに終了した。なお、はつり除染後の状況については、科学技術庁の状況確認を受けるとともに、平成12年7月7日に県、村、隣接市町村の確認を受けた。ピット内へのコンクリート打設作業については、ピットの管理区域を解除した平成12年7月6日以降から準備を開始し、3回(3層)に分けてコンクリートを打設(約1,200m3)し、平成12年8月31日までに塗り床を含め終了した。なお、本報告書の別冊として、廃棄物屋外貯蔵ピットの改善措置等に係る写真集(別冊PartI)及び廃棄物屋外貯蔵ピット内の汚染測定、除染後の確認測定等関連データ集(別冊PartII)がある。
大和田 仁*; 三原 守弘; 黒木 泰貴*; 有本 邦重*
JNC TN8400 2000-027, 19 Pages, 2000/08
セメント系材料と地下水とが接触することによって発生する高アルカリの浸出液の流れ(高アルカリプルーム)が、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物の処分場周辺の環境に及ぼす影響のうち、岩盤への影響を調べるため、変遷初期及び中期のセメント系材料からの浸出液を模擬したアルカリ溶液および低アルカリ性セメントの実浸出液(LW)への花崗岩の80での浸漬試験を行った。浸漬前後の浸漬液の組成及び岩石の鉱物組成を調べたところ、模擬浸出液を用いた試験では、花崗岩に含まれる長石類等からのSi及びAlの溶出とC-S-Hの析出とが確認された。このことによって、高アルカリの浸出液によって、処分場周辺の岩石が影響を受け、核種の移行遅延効果に影響を及ぼす可能性があることが明らかとなった。一方LWを用いた試験では、岩石からの成分の溶出は観られず、液相のSi,AlおよびCaの減少が確認され、C-S-H、C-A-S-H等の2次鉱物として析出したことが示唆された。これらの結果から、高アルカリプルームは岩盤との反応による透水係数の変化や、2次鉱物の析出による分配係数の変化などの処分環境の変化の原因となる可能性があることが分かった。これに対して、LWでは、比較的短期間に花崗岩との平衡に達するので、前述のような処分環境への影響は比較的小さく、またその影響の及ぶ範囲も狭くなることが考えられた。
嶺 達也*; 三原 守弘; 大井 貴夫
JNC TN8430 2000-010, 27 Pages, 2000/07
放射性廃棄物を地層処分する場合、地下水、緩衝材、放射性廃棄物などに含まれる多種多様の有機物が、地下深部に存在する微生物及び処分施設建設時に地表付近から処分施設に持ち込まれる微生物の炭素源となることが考えられる。微生物が有機物を炭素源として利用した場合、二酸化炭素などのガスを発生させる。このガス発生は、地層処分システムの安全性に影響を与える一つの要因と考えられる。本研究では、ガス発生の観点から、メタン生成細菌の活動に着目し、微生物の活動にともなうガス発生に対する有機物の違いによる影響を調査するため、地下水に比較的多く含まれるフミン酸、ベントナイトに含まれる酢酸などの有機物を対象に微生物の有機物分解にともなって発生するメタン及び二酸化炭素の量を測定することとした。試験は嫌気条件で実施し、培養温度は35とした。有機物濃度は培養液に対して100mg/lとなるように調製した。また、pHがガス発生量に与える影響を調査するため、pHをパラメータとすることとした。その結果、フミン酸はメタン生成細菌の炭素源になりにくいこと、また、酢酸などを使用した試験結果から、pHが高くなれば、メタン生成細菌の活動にともなって発生するメタンの量が減少することが示された。なお、二酸化炭素の発生量がpHの上昇にともなって減少することは確認できなかった。
嶺 達也*; 三原 守弘; 大井 貴夫
JNC TN8430 2000-009, 35 Pages, 2000/07
TRU廃棄物の処分方法として、地層処分施設へ埋設する方法が検討されている。使用済核燃料の再処理埋設より発生するTRU廃棄物である低レベルプロセス濃縮廃液の固化体には、多量の硝酸塩が含まれている。硝酸塩は微生物の脱窒作用により、最終的に窒素まで還元される可能性がある。このため、嫌気条件での微生物による硝酸塩の脱窒にともなって発生する窒素が人工バリアの破壊や人工バリア中の汚染水の押し出しといった物理的な影響を与える可能性があることが指摘されている。したがって、脱窒能を有する微生物(以下、脱窒細菌と記す)が処分システムに与える影響は重要であると考えられる。本研究では、高アルカリ、還元性となる処分環境に対する脱窒細菌の耐性を調査することを目的として、脱窒細菌としてPseudomonas denitrificansを使用し、pH及びEhが脱窒細菌の活性に与える影響を把握するための実験的研究を実施した。その結果、pHが脱窒細菌の活性に与える影響については、本研究で使用した脱窒細菌では、pHが中性より高くなるにつれて低下し、pH=9.5以上では定量下限値以下となることが示された。Ehが脱窒細菌の活性に与える影響については、把握することはできなかったが、試験条件が還元環境に制御されていれば、脱窒細菌は活性を持つことが明らかとなった。いずれにしても、pHが12.5程度の高アルカリとなる処分環境条件においては、本研究で使用した脱窒細菌の活性はEhにかかわらず、中性領域での活性と比較すると小さくなると考えられた。
加藤 大生*; 佐藤 光吉*; 大和田 仁*; 三原 守弘; 大井 貴夫
JNC TN8430 2000-008, 53 Pages, 2000/05
TRU廃棄物の処分システムには多量のセメント系材料の使用が検討されており、セメント系材料からの高アルカリ性の浸出液の拡がりによって処分場周辺岩盤が溶出し、二次鉱物が析出すると考えられている。この浸出液の拡がりは高pHプルームと呼ばれている。高pHプルームは地下水の流れに沿って徐々に拡がることから、二次鉱物を含む岩石の性状や地下水の成分は時間的あるいは空間的に変遷することが予想される。しかし、これまで二次鉱物及び地下水成分の時間的、空間的変遷についての知見は得られていない。このため、本研究では二次鉱物及び地下水成分の変遷に関する知見を得ることを目的としたカラム試験を実施した。総延長4m、内径3.7cmの大型カラムに粉砕した花崗閃緑岩を充填し、80の恒温槽中においてpH13.3の模擬セメント浸出液(Na:0.1mol/l、K:0.1mol/l、Ca:0.002mol/l)を流量0.1ml/minで7ヶ月間通水した結果、カラムの上流においてカルサイト及びC-S-H系化合物、中流から下流にかけてはC-S-H系化合物が岩石の表面に二次鉱物として析出し、4m先まで高pHプルームの影響が及んでいることを確認した。また、Na、Kが支配的な模擬セメント浸出液では、岩石との反応によるpHの低下がみられなかった。本研究により、高pHプルームの流れに沿った二次鉱物及び地下水成分の変遷に関する基礎的な知見が得られた。
嶺 達也*; 三原 守弘; 大井 貴夫; 林 孔華*; 川上 泰*
JNC TN8430 2000-003, 33 Pages, 2000/04
TRU廃棄物には硝酸塩を含む低レベル濃縮廃液を固化したアスファルト固化体が含まれる。現在、これらのTRU廃棄物の処分方法として、セメント系材料の使用を想定した地層処分施設への埋設が検討されている。TRU廃棄物の処分研究においては、処分システムの安全性に影響を与える様々な要因の検討が進められている。この安全性に影響を与える要因の一つとして、これまでに、地下深部に存在する、あるいは処分施設建設時に持ち込まれる微生物によるアスファルトの劣化が挙げられている。本研究では、微生物によるアスファルト劣化に関する知見を得るために、中性領域で好気条件または嫌気条件において活性を有する微生物によるアスファルト劣化試験を実施し、アスファルトの重量減少に基づいてアスファルトの劣化量を測定した。また、好気条件では、上記の微生物を使用し、試験溶液のpHを高アルカリとして、セメント系材料の使用を想定した試験を実施した。それらの結果から微生物のアスファルト劣化速度を算出し、微生物によるアスファルト劣化が、想定される処分環境条件において生じるか否かを調査した。その結果、上記の微生物のうち、最もアスファルトを劣化しうる微生物を使用した場合においても、低酸素状態で高アルカリになると想定される処分環境でのアスファルト劣化速度は微生物に最適な環境におけるアスファルト劣化速度の1/300以下となるとの試算結果を得た。
間中 光雄
JNC TN8400 2000-012, 33 Pages, 2000/04
処分場周辺の酸化還元状態は人工バリアシステムの性能に影響をあたえると考えられる。とりわけ、圧縮ベントナイトの空隙に存在する酸素は処分場周辺の酸化還元状態に強く作用するだろう。酸素の影響を評価するために、圧縮ベントナイト中の酸素の輸送パラメータおよび酸素の消費プロセスを知らなければならない。そこで、つぎの研究が実施された。圧縮ベントナイト中の溶存酸素(DO)の拡散を理解し、かつ、溶存酸素の影響を見積もるために、電気化学的手法を用いて圧縮Na型ベントナイト中を拡散する溶存酸素の実効酸素の実効拡散係数(De)を求めた。その結果、ベントナイトの乾燥密度と溶存酸素の実効拡散係数はつぎのような関係にあることが分かった。De=1.53+-0.1310-9exp(-2.15+-0.2410-3p)Deは溶存酸素の実効拡散係数(m2s-1)、pはベントナイトの乾燥密度(kgm-3)である。ベントナイトの空隙に存在する酸素は、ベントナイトに含まれる不純物の黄鉄鉱の酸化反応によって消費されると期待されている。この考えを確かめるために、圧縮Na型ベントナイト中の黄鉄鉱の酸化速度が本研究で得た溶存酸素の実効拡散係数を用いて黄鉄鉱-ベントナイト系の実験データから見積もられた。乾燥密度0.8および0.9、1.0、1.1、1.210 3kgm-3のベントナイト中の黄鉄鉱の酸化速度定数は、それぞれ1.38+-0.3210-8、1.10+-0.2410-8、1.16+-0.3510-8、9.36+-2.2310-9、7.48+-1.9210-9ms-1であった。圧縮ベントナイト中の黄鉄鉱の酸化速度定数(k')は圧縮ベントナイトの乾燥密度(p)とつぎのような関係があることが示された。K1=3.94+-1.0610-8exp(-1.33+-0.2810-3p)しかるに、炭酸溶液(初期pH=9.24)中のそれは1.46+-0.0910-9ms-1であった。DOと反応した黄鉄鉱の表面には、溶液のpHに依存しながら酸化層が形成する。形成した酸化層は黄鉄鉱内部への酸素の拡散を阻止することが考えられる。酸化反応によって形成した生成物を知ることは重要となる。そこで、レーザーラマン分光法を用いて実験前後の黄鉄鉱表面を分析した。その結果、黄鉄鉱表面に形成した酸化物は
電気事業連合会*
JNC TY1400 2000-001, 464 Pages, 2000/03
再処理施設やMOX燃料加工施設から発生する超ウラン(TRU)核種を含む放射性廃棄物のうち、核種の濃度が一応の区分目安値(約1GBq/t)を超え、浅地中処分以外の地下埋設処分が適切と考えられる廃棄物(以下、本検討書では「TRU廃棄物」という)については、「高レベル放射性廃棄物の処分方策との整合性を図りつつ、1990年代末を目処に具体的な処分概念の見通しが得られるよう技術的検討を進める」という原子力委員会の方針に従い、これまで関係各機関において研究開発が進められてきた。これらの研究開発成果を集約し、国の総合的なTRU廃棄物の処分方策の策定及び核燃料サイクル事業の円滑な推進に資するため、核燃料サイクル開発機構及び電気事業者等は、「TRU廃棄物処分概念の取りまとめに関する協力協定」を平成9年6月24日に締結し、「共同作業チーム」を編成して平成11年度末を目途にTRU廃棄物処分の具体的方法とその安全性の見通しに関する技術的検討を進めてきた。本技術検討においては、研究開発情報交換会等を通じて外部の意見等を取り込むとともに、国内外の専門家によるレビュー等も受けてきた。本検討書は、これらの検討結果を総合的に取りまとめたものである。本技術検討結果は、平成10年12月に原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会に設置された「超ウラン核種を含む放射性廃棄物分科会」における審議の参考として適宜提供してきた。
大和田 仁*; 三原 守弘; 入矢 桂史郎*; 松井 淳*
JNC TN8400 99-057, 43 Pages, 2000/03
高レベル放射性廃棄物ならびにTRU廃棄物の地層処分にはセメント系材料の使用が考えられている。しかし、セメント系材料からの浸出液はpHが高く、カルシウム濃度も高いために、周辺の岩盤や緩衝材を変質させてしまう。そのため、放射性核種の溶解度や分配係数などが変化し、核種の移行に影響を及ぼすことが懸念されている。これらの影響を抑制する対策として、現在、浸出液のpHの低いセメント系材料の使用が考えられている。本研究では、まず上述の低アルカリ性セメントの必要性についてまとめ、さらにセメントの低アルカリ性化の考え方を整理するとともに、実用性に向けて必要となる課題を抽出した。さらに、本研究では、抽出した課題に基づいてセメントペーストの浸出試験、モルタルの流動性試験ならびに、モルタルとコンクリートの模擬構造物への打設試験を行った。セメントペーストを用いた浸出試験結果から、ポゾラン材料を添加したセメント(HFSC)の低アルカリ性化を確認した。また、モルタルの流動性試験の結果から、実用性評価に用いるセメントの配合を検討した。さらに、模擬構造物への打設試験によって、得られた低アルカリ性セメントの実用性を評価した。これらの検討の結果、シリカフォーム(SF)およびフライアッシュ(FA)を添加することでセメントからの浸出液のpHを下げられることが分かった。また、良好なワーカビリチーを得るためにはSFとFAとを同時に添加する必要があることが明らかになった。さらに、実用性の評価の結果、SFとFAとを同時に加えたセメントは、普通ポルトランドセメントと同等のワーカビリチーおよび強度を示した。この結果から、HFSCはポルトランドセメントと同等の実用性を備えていることが示された。
森 康二*; 根山 敦史*; 中川 浩一*
JNC TJ8400 2000-064, 175 Pages, 2000/03
本研究は、高レベル放射性廃棄物の地層処分システムに於けるニアフィールドの耐震安定性の評価を目的として、以下の検討を実施したものである。(1)解析コードの妥当性の検証 本研究で開発してきた三次元有効応力解析コードは、とくに間隙水圧を考慮しない1相系解析機能に対しては、振動実験等による実測データとの比較を通じて検証を行ってきた。本年度は、サイクル機構で別途実施した緩衝材の液状化試験データを用い、間隙水圧の挙動に着目した有効応力解析機能の検証を行った。(2)2000年レポートに対する補足解析 2000年レポートでは代表的な処分場デザインのオプションを念頭に置いたニアフィールド地震応答解析および評価を行い、人工バリアシステムの耐震安定性を確保できる見通しを得ることができた。その一方で、オーバーパック-緩衝材間や緩衝材-岩盤間等の材料不連続面の応答を規定するモデルパラメータが、評価上重要な因子であるとの知見が得られた。今年度は、上記の2000年レポートに示した検討結果を支援するため補足解析を行い、耐震安定性に関する総合的評価を行った。(3)防災研との共同研究取りまとめに対する補足検討 平成4年度から進められてきた人工バリアシステムの耐震安定性評価に関する共同研究は、今年度を目処に成果を取りまとめることとなっている。本研究では、実測されたデータとの比較を通じて、解析コードの検証作業を段階的に進めてきた。本検討では、最新版の解析コードを用いた一連の実験データ解析を改めて行い、上記共同研究の取りまとめに資するデータ整備を行った。
伊藤 文雄*
JNC TJ6420 2000-002, 59 Pages, 2000/03
本研究は、レーザー照射による岩盤掘削技術の開発を目的としている。このレーザー岩盤掘削技術は、対象岩盤の地質、賦質に囚われることなく、掘削周辺の環境に極めて与える影響が少ないという特徴がある。そして、堀削地の後、埋め戻す必要のある廃棄物処理場の堀作、様々な地層を掘り抜くロングスパンの立坑やトンネルの堀作及び岩盤・地盤の改良に期待される。レーザーは、エネルギーを局所に集中される特徴があり、鋭い鋏のように小さな力で大きな領域を不連続化、あるいは切断していくことができるとともに表面から深くにある部分の溶融ガラス化によって亀裂等を寒ぐといった改良が可能とされる。このことは、エネルギーの有効利用、自然環境保全、作業環境の改善にも結びついていく。処分坑の堀削、炉解体、鉱山跡措置等、核燃料サイクルの分野では、岩盤やコンクリートなどを限られたスペースを利用して堀作、切断溶融する必要が生ずる。これまでは、主として大型の機械により行われてきているが、これらの機械は、設備の巨大化や重量の大きさ、無人化の難しさ、限定された切断形状、廃棄物の安定化など、改善が求められていても、発展性が非常に乏しい。本研究では、これまで、レーザー岩盤堀削に係る実現へのブレークスルーを見出すべく、レーザーの高出力化、小型化、ファイバーによる伝送などの動向を調査、基礎的な研究を行うとともに、レーザー堀作の具体的なシステムイメージを検討してきた。本年度はレーザ堀削技術技術研究のまとねとして、高出力レーザーにより不連続化した岩体への削除への応用や流下体(溶融ドロス)の除去方法の改善等を意識し、岩盤改良にも効果が高いと考えられる低出力レーザーの利用について検討を行う。